子ども達と一緒に作品展をするのが、私の夢です

フレイヤ・ディーン

ジャパンビジネスディビジョン コートヤードグループ
Dean Freyja Jayne(フレイヤ・ディーン)1987年英国ブライトン生まれ。ロンドンのセントラル・セントマーティン校美術科で修士を取得。イングランド王立外科医師会で解剖模型の制作に携わる。現在はコートヤードHIROOでFREYJA NO HEYAの講師を務めながら、アーティスト活動を行う。トランスヒューマニズムに注目し、木や3Dプリンターを用いてミクストメディアを制作している。最近の趣味は日本の古典文学。

体・心・頭のバランスをとるアートクラス

出身は、イギリスのブライトン。ロンドンで芸術・科学の修士号を取得したあと、19歳の頃からオペラの衣装やゲームキャラクターのデザイン、アルバムカバー、公共スペースのデザインを行うなど、アーティストとして活動していました。その後、5年前に拠点を東京に移動。現在はコートヤードHIROOで週3回、子どもを対象にしたアートと英語の教室を開いています。

「フレイヤの部屋」と名付けたそのクラスには、4〜12歳の子どもたちが通っています。「大人だけど、通いたい」という声もいただくのですが、基本的に、対象は子どもたち。なぜかというと私自身、感性が豊かで柔軟な子どもの時期に、アートや英語の感覚を磨いておくことが、将来、とても役に立つと知っているからです。

私は子どもの頃、シュタイナースクールに通っていました。シュタイナースクールとは、世界的に行われているユニークな教育スタイル。自由教育の象徴とも考えられていて、一般的に日本で行われているような、知識偏重の受験教育と対極にあるものです。シュタイナースクールでは知識だけに偏らず、体・心・頭のバランスを取ることを重視して、自由に体を動かすことで意思の力や想像力を伸ばします。子どもたちは一人一人、異なるアイデンティティを持っていて、みんなに自由が必要である。そういう思想のもと、私は教育を受けました。

シュタイナースクールの授業はとても特徴的です。普通、学校では「今日はみんなでこれを作りましょう」「今日はこれの勉強をしましょう」といって、みんな同じことをやりますよね。でも、私が通っていた学校は違います。

「今日、あなたは何をしたいですか」「何を作りたいですか」

そんなふうに、先生は子どもたちにやりたいことを確認します。そして、子どもは自分の興味あることや学びたいことをするのです。お姫様の絵を書く子どももいれば、粘土で恐竜を作る子どももいる。そこでは子どもの主体性が大事にされ、先生と子どもはお互いの意思を尊重します。

「フレイヤの部屋」も、そういうスタイルを取っています。上手に作ることや、きれいに描くことは大事にしません。子どもたちはみんな、好きなものを好きなように作ったり、書いたりします。ある男の子がいました。彼はゴジラとモスラが大好きでした。でも、「フレイヤの部屋」に来たばかりの頃は、恥ずかしかったのか、それとも自信がなかったのか、自分で絵を描くことができなかったのです。だから、はじめは私が絵を描いて、彼がそれに色を塗りました。

ある日、初めて彼は自分で絵を描きました。それはとてもゴジラというよりむしろ恐竜っぽくて、とても面白い格好をしていました。

「自分で描けたね」

そういうと、彼はとても嬉しそうな顔をしました。これまでできなかったことが、ある日、突然できるようになる。その瞬間、彼の顔には大きな自信があふれます。そうやって、子どもは少しずつ成長を重ねていきます。

自由と自信を身につけてほしい

日本に来て5年になりますが、アートに対するイギリスと日本の違いはとても大きいなと思います。イギリスでは絵を描く時、まず、コンセプトを大事にします。どんな思いでその絵を描きたいのか。その絵で何を表現したいのか。

でも日本では、上手に描くことを大事にします。コンセプトは二の次。表現方法やテクニックが最も大事で、他人から評価されるものなのです。どちらの国がよくて、どちらが悪いということではありません。ただ私は、自由で柔軟な感性を持つ子ども時代に、アートを通して「自由」を学ぶことや、「自信」を身につけることを教えてあげたいと思うのです。シュタイナースクールは、私に自由や自信を与えてくれましたが、いくつか通ったアートスクールのなかには、まったく違う教え方をするところもありました。ときどき、「その絵はダメ」「こういうふうに描きなさい」など、指導をされることがありました。

「あなたがそれを好きなのはわかるけれど、こっちの絵の方がもっといい」と言われるたび、私は子ども心にガッカリしていたのです。そのときもし、「あなたはフレイヤのままでいい。好きなことをやりなさい」と言われていたら、もしかしたら私の人生も、もう少し違ったものになっていたかもしれません。

新しいアートの世界を作りたい

「フレイヤの部屋」を行う一方、個人的にアートの制作活動も行っていますが、作品を作るのは「オン」の日だけ。作品をつくるのはアウトプットの作業なので、オフの日はインプットの時間に当てていて、美術館へ行ったり、日本語を勉強したりして、楽しんでいます。2017年に、同じくアーティストである両親と一緒に作品を展示するイベントを、コートヤードHIROOで開催しました。

次は、子どもたちと一緒に作品展をやってみたい。子どもならではの自由な感性から作品を生み出すお手伝いをして、子どもたちやご両親、それから観にきてくださる方にとって、新しいアートの世界をお見せできたらと思っています。