粋な日本にするために、粋な人に出会い、そんな人々の存在を世の中に伝えていきたい。

コートヤードHIROO誕生から3年。ミッション2030を掲げ、新たな展開へと乗り出したA-TOMが、これから目指す未来とは。

Shigeru Aoi:前回の対談から3年経ちました。
Chushiro Aoi:早いですなあ。びっくりしましたよ。
Shigeru Aoi:あの頃は、新しい挑戦の一つとしてコートヤードHIROOをつくったばかりだったんですが、しばらくは暗中模索でした。
Chushiro Aoi:そうでしたね。
Shigeru Aoi:でも面白いもので、ユニークな事をし始めると「なんか面白い事やってる奴がいる」となって、今までにない掛け算が始まったんですよね。
Chushiro Aoi:こういう事をやってみたいと思っているみなさんも多いからではないですか。実際は、なかなかそういうタイミングがないから難しいんでしょう。
Shigeru Aoi:唯一無二とまでは言わないですが、相当ユニークな場所になってきていると思いますよ。
Chushiro Aoi:それはそうだと思います。だからやっぱり考えさせられますよね。コートヤードのイベントを見るとかなりユニークだと思います。大丈夫なのかなっていう時もあるけど(笑)、確かに考え方としてはありなのかなと。
Shigeru Aoi:招待状も入場料もないイベントって現代ではユニークではあると思いますが、70年代80年代ってそういうのは普通にあったと思うんです。お祭りの縁日や地域の盆踊り大会のようなものって。それを今風にアレンジしてやっているのですけどね。
Chushiro Aoi:引き継ぐべきものは何か、変えるべきものは何か。その選択は我々が自分で考えるんでしょうね。それがセンスというものかもしれない。
Shigeru Aoi:そういう意味で私が凄く面白いと思っているのは父でもある社長なんです。社長の世代にとって当たり前の事が私達にとっては新しいし、私達の日常は社長の世代にとっては新しい。だから社長と副社長、世代をまたいだそんな二人の経営者の微妙なズレみたいなものが、面白いことができている理由かなと思います。
Chushiro Aoi:確かにそうですね。
Shigeru Aoi:社長の世代にとっては失ってはいけないものだけど私達には失ってもいい物だったり、またその逆もあったり。そのバランスはコートヤードをやるのにも活きています。
Chushiro Aoi:コートヤードがいまのようなカタチに落ち着くまで、ある程度は成り行きだった面もあるだろうし、私もいろいろ思う事もありますよ。でも、若い人でないとこういう発想はなかなかできなかったろうなと思います。
Shigeru Aoi:とくにかく私は昭和に憧れがあるんでしょうね。特に昭和のビジネスマン、サラリーマンに。諸先輩方の話を聞くと面白いなと。一番衝撃的でうらやましいなと思ったのが運動会なんです。
Chushiro Aoi:社員みんなで運動会をやると、働くことは単に時間を費やしてお金を稼ぐことが目的ではないんだと気づきますよ。酔っ払うとみんな運動会の想い出話ししかしない。働いている思いなんて一回も聞いたことありませんから(笑)。それまで顔しか知らなかった者どうしが、運動会が終わるとあだ名で呼ぶんです。◯◯君、◯◯さんって呼んでいたのがカズちゃんとかに変わっている。そうなると仕事の流れもよくなるし、いろいろ楽なんですよ。
Shigeru Aoi:それって、いま思うと日常の業務の面でも凄く効果があったということですよね。2000年代って、そういう時間と労力とコストは無駄だと言って全部削ってしまった。無駄だから、労力がかかるから、金にならないからダメって言うのは、我々は未来に向けてもっと見直さないといけないと凄く思っています。すみません、突然運動会の話なんかして(笑)。
Chushiro Aoi:未来といえば、いまA-TOMはミッション2030(トゥエンティ・サーティ)というのを掲げて、2030年に売上20億の会社を30個つくることを目指そうとしているのだけれども。
Shigeru Aoi:もともとは、あまりビジネスの規模が大きくなってしまうと会社でのコミュニケーションが希薄になって働くことが面白くなくなってしまうというというのが出発点でした。その考えのもと、目標を定めて次世代の30人のリーダーをつくって、そういう中で楽しく面白く行こうじゃないかって二人で話していたことですよね。社長も私も大きな会社で働いた事があるし、会社のコマになる瞬間ってやっぱり面白くないですから。
Chushiro Aoi:人の顔が見えなくなった瞬間、チーム感が無くなって仕事が作業になってしまう。どうせだったら売上20億を100人以内でつくり上げるほうが、名前と顔が覚えられて、そんな範囲でやる仕事の方が我々の目指すべき方向なのかと話をしましたね。
Shigeru Aoi:いろんな雇用をつくったり、世の中に貢献したり、それも使命だと思っているので、だったらそういう会社を何個かつくれたらというのが発想の原点でしたね。
Chushiro Aoi:人生、いかにいい人にめぐり会えるかと言うのもあります。私はいろんな企業の方と会うけども社長さんにはあまり興味がないんです。社長さんの次の人に非常に興味があります。その会社の戦略を計画に移して実行する方々とはどんな人のかに興味があります。そういう人達を30人のリーダーとしてスカウトするのも考え方の一つかもしれませんね。
Shigeru Aoi:でもそういう人にいきなり30個のうちの1つの社長になってもらっても絶対に合わないです。風土が違うし、同じ方向を向いてないから。しばらくの間、チームA-TOMで我々と同じマインドを育ててもらって2023年、2024年くらいに新しいビジネスがポコポコ育っていくと最高ですね。
Chushiro Aoi:家に家風があるように会社にも社風があるわけで、それがすごく大事なのは確かです。会社に馴染めないと頑張ろうと思えないですから。
Shigeru Aoi:2030ではもちろん海外も視野に入れていますが、もうすでにドイツを始めとしてヨーロッパや、カンボジア、ベトナムなどアジアでも展開も始めていますし、新しい挑戦というのも一つの捉え方かもしれませんが、我々としては今後50年100年を考えたとき海外というのは当然必要なものですよね。
Chushiro Aoi:そもそも海外の彼らが知ってるのは大企業だけなんですよ。小さな会社にはほとんど見向きもしない。そういうものにも我々はチャレンジしている。日本にも小さいけどこんなに面白い会社があるんだよと。いまそれが少しずつ実績として出てきましたから。
Shigeru Aoi:そういう挑戦はリスクがあるんじゃないかと言う人もいます。日本でリスクというと必ず失敗の話になる。でも刈り取れる果実を逃すリスクもあるので、そこはイーブンのはずなんです。プノンペン(カンボジア)でビジネスをしようと言うと、カンボジアってリスクじゃないかと日本人って言うんですよ。でもイギリスにいる知人と話していたら、人口減少していく日本こそがリスクじゃないかって。どの国でも地域でもリスクはあるということなんです。
Chushiro Aoi:これからどうやるかは、私はあまり深刻に考えていませんよ。500億600億の会社をつくらないとねというところから始まって、小さい方がいいじゃないの、30社くらいに分けたらいいんじゃないのと。だったら出来るんじゃないか。結構スピードも出るんじゃないかなという感覚ですよ。
Shigeru Aoi:社長はよく「日本は凄かった」っておっしゃいますよね。ところが私の育ってきた1990年代、2000年代は、世界から日本が軽視されたジャパンパッシングの時代でした。
Chushiro Aoi:いまは時代が変わりましたが、私の若い頃は本当に凄かったからね。
Shigeru Aoi:でも、なんだかんだ言って日本にはまだまだ体力があるのだから、日本のいいところを残していきたいなっていうのが一番根底にある思いなのかもしれません。それを20億×30社って言葉にしてしまうと、何?こいつら600億欲しいだけ?という感じになってしまいますけど、でも根底はそうじゃない。
Chushiro Aoi:給料も上がらないし運動会も社員旅行もない。そんないまの時代に、凄かった頃の日本のビジネススタイルのよいところを蘇らせたいと。
Shigeru Aoi:私は今まで6、7年社長と一緒にビジネスをさせてもらって、いろんなことを学ばせてもらってきました。いい時代のエッセンスをすごく抜き取れていると思います。だからその抜き取ったエッセンスをつぎの世代に伝えるのが私の使命だと思っているんです。日本って、色気があったんですよ。粋だったし。だけど今ってぜんぜん粋じゃないじゃないですか。何でも数字で判断したり。
Chushiro Aoi:粋な日本ではないですね。
Shigeru Aoi:粋な日本というのを世界に広げていく、伝えていくのが私の使命なのかなと。そのために一緒にミッションを進めてくれる30人のリーダーがいてくれれば、なんとかなるんじゃないか。30人が50人になり、100人になり、みんなが粋な日本を伝えていけば、先人達に感謝する活気ある日本になっていくのではないかと思います。
Chushiro Aoi:いいですね、粋な日本。お茶をしたり美術館に行くと昔の人は幸せだったしお金持ちだなと思いますね。美術館を持ったり茶室を持ったり。今の経営者にそんな人はほとんどいないでしょう。でもやっぱりそういう粋な社会、粋な人っていいものですよ。
Shigeru Aoi:そういうイズムだと思います。そういう使命がなかったら、2030というミッションに取り組む意味がないですから。