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SHIGEO SAWAIRI x SHIGERU AOI

J クラブが地域社会にできること

富山出身の祖父、青井忠治が東京に出てきて、アトムを創業してから57 年。三代目となる私が今、何か富山にできることはないだろうか? そんな思いから現在、A-TOM はJ リーグ・カターレ富山と共に、様々な取り組みにチャレンジしています。サッカー、J リーグというコンテンツは、地域の街作りや教育に対してどう貢献することができるのか。カターレ富山の澤入重雄GM兼監督に伺いました。
Shigeru Aoi:澤入さんがカターレ富山のGM に就任されたのが、去年(2014 年)の11 月。クラブからオファーを受け、お仕事を引き受けた決め手は何だったのでしょうか?
Shigeo Sawairi:クラブからお話をいただいた後、実際にスタジアムに行ってサポーターの方々を見たことが大きかったですね。昨シーズンの終盤、山雅(松本山雅FC)との試合でした。アウェイだったので場内の9 割が山雅サポーターという試合で、残念ながら負けてしまったのですが、そのスタジアムで90 分通して応援し続けるカターレサポーターの姿が印象的で。これまで自分がサッカー畑で培ってきた経験が少しでもお役に立てればな、と思いました。
Shigeru:富山には、BC リーグやBJ リーグのチームもありますが、決してスポーツコンテンツが多い街ではないと思います。その中でもサッカーは大きなコンテンツだと思うのですが、地域の方々との交流などはあるのでしょうか?
Shigeo:カターレに来て驚いたのは、地域との距離を縮めるためのイベントがすごく多いことですね。2013 年には208 回のイベントを実施していますが、数でいうとJ 全体でも上から3 番目でした。去年は195 回で、今年はまた200 以上を目標にやっています。これはフロント、育成スタッフ、そしてトップチームの選手たちが一緒になって、ひとつひとつ積み上げてきたくれたことですね。具体的には、たとえば田植えや稲刈り、海開きといったイベントに、選手全員で参加したりしています。あるいは、小学校や中学校に選手たちが授業の一環として訪れる「プロ直伝」という活動があります。この活動は「教える」というよりも「遊びに行く」という感じで、実際に選手たちと触れ合ってもらうというのが趣旨ですね。これは富山県の事業として、誘致していただいています。
Shigeru:行政とのタイアップという形で取り組まれているわけですね。
Shigeo:はい。クラブとしては単に協賛していただくというのではなく、もう一歩踏み込んで、行政や企業の活動として一緒にコラボレーションして何かを実施するというスタイルを目指しています。企業のフットサル大会や運動会といったイベントに選手が参加することもありますね。
Shigeru:子供たちや地域の方々、あるいはスポンサー企業にとっても、実際に触れること、リアルな体験ってすごく大事ですよね。チームや選手たちにリーチできるコネクションポイントがあればあるほど、どんどん地域に愛されるチームになっていくのだろうなと思います。

世界のどこのクラブも主は「育成型」

Shigeru:クラブとしては今年、「J2 昇格」というのが命題としてあると思います。チーム作りにはどのように取り組まれているのでしょうか。
Shigeo:チーム作りにおいて重要なのは、監督を中心とした日々のトレーニングと、良い選手を見つけてくるスカウティング、そして育成です。世界中、どこのサッカー界でも「育成型のチームにするのか」あるいは「どんどん良い選手を補強していくのか」といった議論はありますが、世界のどこのクラブも主は絶対に育成型なんです。我々のチームでもやはり「主力となる選手はカターレで育成されていく」というのが、あるべき姿だと考えています。チームに入るタイミングはユースだったり、あるいはプロからプロへの移籍だったりと色々ありますが、どのタイミングでも「カターレに入って伸びる」という形を作りたいと思っています。
Shigeru:先程スタッフの方から下部組織に500 人ほどの選手がいると伺いました。さらに増やしていこうといった目標はあるのでしょうか?
Shigeo:まだまだ増やしていきたいとは思っています。ただ、富山は東西に広いので、物理的に一カ所のスクールではカバーし切れない。ですので、ユースの育成に関しては必ずしもカターレである必要はなくて、たとえば各地域の人たちと一緒になって、週一回カターレのスタッフが行って指導するとか、色んな関わり方があります。カターレという名前ではなくても「カターレイズムが入ってる」という形に自然になっていくのが、富山の場合は良いのではないかと考えています。
Shigeru:カターレの型にはめることが重要なのではなく、地元のスクールにカターレイズムを注入してやっていく、ということですね。

オランダ合宿で見た「サッカー遊園地」

Shigeo:以前、中学生の選手たちを1 週間ほどオランダでの合宿に連れていったことがあるのですが、そこがすごく面白かったんです。 グラウンドの横にテントが張られていて、キャンプ上のように寝泊まりしながら1週間過ごすんです。コテージのような場所にご飯を作るところもあって、寝袋で寝て。オランダ中から選手たちが集まってきて、ミックスでトレーニングしたり対抗戦をしたり。あと、そこにはサッカー版の移動遊園地ともいうような施設があって、キックターゲットだったりリフティングだったり、サッカーの要素を取り入れた遊び場のようになっているんです。ここはドリブル何秒以内で何点、といったようなポイント制になっていて、合宿の最後にはテストがあるんですね。それで優勝者には賞品が送られて。楽しみながらサッカーに触れる機会を増やしたいと思っています。
Shigeru:それ、やりましょう! 実現の際には是非とも協賛させてください!
Shigeo:まあ実際やるとなると、色々ハードルはありますけど(笑)。でも、アジアにも良いチームはたくさんありますし、そうしたツアー合宿みたいなこともできれば、と考えています。何より、子供たちにとって素晴らしい経験になりますからね。子供たちが楽しくサッカーできる場所を作っていこうと考えたとき、僕等ができることはソフトを提供することです。一方で、たとえば子供たちをどうやって集めるかとか、実際にどうやったら実現するのかといった、ハードの部分に関しては足りないところが多い。その部分を、協賛していただける方々にぜひご相談させていただければ、と思っています。ソフトだけではダメだし、ハードだけでも意味がありません。ただ協賛していただいてお金を下さいというのではなく、お互い協力しながら環境を整備していく。そういうコラボレーションの形を、これからもっと増やしていきたいですね。

澤入重雄(さわいり・しげお)

1963年5月8日生まれ。2014年11月16日、カターレ富山のGMに就任。静岡県清水市(現:静岡県静岡市)出身の元サッカー選手、サッカー指導者。ポジションはFW(センターフォワード)。JFA公認S級コーチ(2004年取得)。